三重県松阪市様

書かないことが目的ではない。
申請を聞き取りながら直接データにする。
結果、住民と職員の双方の手間や待ち時間を減らすことにつながる。

左から、小林様、橋本様

三重県松阪市様

窓口DXソリューションすべてのサービスを導入

導入効果

松阪市様が抱える課題

待ち時間が長く、
待合スペースが混雑する

手戻りが多く、住民・職員ともに
負担がかかる

住民の方があちらこちらへと
移動しなければならない

導入による効果

庁内の滞在時間が約40%減少

申請書の記載間違いがない

住民の方の移動がスムーズかつ減少

松阪市では令和2年度より書かない窓口・窓口連携・手続き案内を段階的に導入し、運用を行っています。
戸籍住民課 課長の橋本様、戸籍住民課の小林様に窓口DXソリューション導入の背景と効果について伺いました。

ライフイベントに関する部署だからこそ ワンスオンリーでできることがある

松阪市では市民にとって使いやすい市役所となるように、窓口のさらなる利便性向上の取り組みが始まり、平成29年より「おくやみコーナー」を開設。申請書作成支援は住民の方に非常に喜ばれていた。
より簡潔に、手続きを完了できる窓口とするため、他のライフイベントに対応した「書かない窓口」へと発展していった。

ー導入のきっかけを教えてください

橋本様:実は住民の方から「(手続きに)すごく時間がかかる」「何度も同じことを書かせないでください」といった厳しい意見をいただいていました。そこで、市長の諮問を受けた松阪市行政のあり方庁内検討委員会からライフイベントに対応した窓口改革が答申されました。この答申を受け、ライフイベントにかかわることの多い戸籍住民課を中心にそれぞれのライフイベントごとに必要な手続の確認に着手しました。

整理をしていく中で、待ち時間を減らすための1つの施策として、職員がヒアリングしながらデータ入力し住民票を作っていく…そして入力したデータを有効活用し、必要な手続きをご案内することが、住民と職員の双方にメリットがあることに気づきました。この気づきにより『書かない窓口』の導入から一歩進んで、別の課への横連携(データ連携)が実現し、複数回行われていた申請書の記入や確認の流れが集約され、1・2回のチェックで済むようになりました。

小林様:『書かない窓口』って申請書を書かないことで注目されることが多いですが、書かないことが目的ではなく、データ化、つまり聞き取りながらその申請書や住民票を作っていることが大事だと思います。
ヒアリングをして証明書が出るだけでなく、(職員も)何度も入力しなくていいということが、ワンスオンリーや手戻りがなくなる、再来庁してもらわなくていい…につながるのだと思います。

全庁的なパッケージシステムの導入による連携とスピーディな対応が導入の決め手に

ー導入の決め手を教えてください

橋本様:松阪市では、松阪電子計算センターのパッケージシステムである住民情報システム『Mscope/eADWORLD2(※)』が庁内システムの大半を占めています。

そのため、それぞれの課が持っている情報と戸籍住民課が持っている情報が密接に連携していたので、そのあたりで連携もスムーズに行えました。
また、細かいところを調整するにあたり、松阪電子計算センターの協力と、パッケージシステムだからこそ、例えば「国保でここを変えてほしい」とお願いすると短期間で対応してもらえるといったフットワークの軽さというのも決め手になりました。

※Mscope/eADWORLD2は、(株)日立システムズのADWORLDの三重県版仕様のシステムです

小林様:実は、書かない窓口を検討するにあたり、(前任者が)他の団体様への視察も行いました。しかし、システムの環境が違う、RPAの保守はどうするのか、日立系シングルベンダである強みを生かしたシステム開発ができないだろうかと検討を進めました。
また、導入当時は標準化は具体的に示されておらず、一緒に窓口支援システムを育てていくパートナーとしてスピード感を重視するとともに、コスト面での不安もある中、松阪電子計算センターだからこそ、松阪市が考える書かない窓口や窓口連携との相性が良かったのだと思います。

住民の方の移動の減少や、圧倒的な時間短縮を実現

松阪市では来庁時の住民への負担の多さが課題となっていた。特にピーク時には一人あたり1時間半にもおよぶ滞在時間がかかり、待合スペースは混雑を極めていたという。

ー導入後にどんな効果がありましたか?

橋本様:メリットの1つめが『来庁者の時間短縮』です。以前は来庁してからの時間が手慣れた人で12分ほどかかっていたのが、現在は4分~7分程度短縮されたので、相当な部分が短縮につながっています。現在でもピーク時には一時的に混雑しますが、1件あたりの捌く時間が短くなったので混雑は一過性のものとなり、過去にあったように1時間半もお待ちいただくことはなくなりました。

2つめに住民の方の『庁舎内移動の負担が減少』しました。記載台には記載例なども設置してありましたが、お客様の状況によってどの記載欄に書けばいいのか、どのようなものが欲しいのか分からないことも多く、記入後、再び職員から質問をしたり、また別のものを書いてもらわなければいけなかったりと手戻りがすごく多かったんです。
しかし、今はそのようなことはありません。住民の方が記載台から窓口へと移動し待たなければならなかった状況が、今は発券機で受付け、(待合スペースで)座って(呼出し後)窓口へきてもらうだけで済むようになり、記載台で書いて、(待合で)座って…今度は窓口へ持って行って、書き直して…の二度手間、三度手間がなくなるという移動の負担軽減にもつながっています。

3つめは『待合スペースの改善』です。以前は、現状の半分以下の(待合)席しかありませんでした。しかし、書かない窓口の導入により記載台を取り払い、待合スペースが広くなりました。
レイアウトを大きく変え、お座りいただいて待っていただく場所を確保させてもらうことができ、たくさんのお客様がおみえになっても座って待っていただける場所となっています。

もちろん職員にとってもメリットが得られています。
例えば「何度も同じ説明をしなくていい」や、基本的な事項には『手戻りがなくなった』ということです。またベテランの担当者であれば気づけるというような『人に依存してしまう』業務がありますが、このシステムを導入し、ヒアリング内容を精査し、システムに組み込んだことで職員固有のスキルに頼らず、どの職員であっても一定以上のサービスを提供できるという形になりました。

もう以前には戻れない

小林様:『もう前に戻れないです』との声が職員からあがっています。記載台に申請書を準備しておき、職員が書き方指導をするというのは、市民も職員も望んでいません。
あと住民の方が、待合スペースでずっと待っているのって、実は職員にとってもプレッシャーなんです。なので、導入前後を知っている職員から標準化にも必ず対応して欲しいと言われています。

プラス、転出・転入ワンストップ(引っ越しワンストップ)が始まっていますが、松阪市は導入がすごくラクなんです。
なかには予約データがうまく活用できていない自治体も多いと聞きますが、松阪市では書かない窓口があるので事前に作れるんですよね。松阪市の書かない窓口では、予約データが連動して仮入力までできてしまうので、松阪市では通常の窓口での受付事務フローが同じなんです。
ワンストップで一気に事務量が増えたと思いますが、松阪市はデータが連携できるので、やることは何ら変わらない。住民の方も署名して終わりなので、『書かない窓口』の存在は大きいと思いますね。

常に前進していく窓口、そして誰も取り残さない窓口へ

松阪市様の今後への取り組み方針は、我々BtoGベンダにおいても学ぶべきことが多く、また当社が目指すべき姿と重なった。

ー今後の展望についてお聞かせください

橋本様:竹上市長の考えにワンストップ窓口を実現したいというのがあり、我々としてもワンストップ窓口を全庁的に対応することが目標になっています。
それを踏まえ、まずは標準化への対策ですね。ベンダの仕様やシステムの内容が国の標準システムとなり、どこまで可能なのかということになります。おくやみコーナーや書かない窓口は今のシステムだからこそできるということで導入していますが、「じゃあ、システムができなくなったらやめていいのか?」という話になってしまいます。
今、ここまでお客様から好評をいただいているものをやめるという選択肢はないと。標準化で後退しないようにしていくことが1点目です。

2点目が、「誰一人取り残さない窓口」です。
色々な方が来られるのが市役所というところです。市役所に自分で来られる人ばかりではありません。DXという単語が浸透し一般名称化しつつあることも踏まえ、これからはスマホを利用したオンライン化も考えていかなければいけないと思っています。

今、このように1つの形となりましたが、この形を堅持していけばいいわけではなく、さらに進めていくにあたっても、まだ研究していかなければいけない事例というのが待っているのかなと思います。

ー貴重なお話ありがとうございました。

松阪市

三重県の約10.8%を占める総面積を有した、県のほぼ中心に位置する人口約16万人の松阪市。
気候も穏やかで、本居宣長や三井家発祥の地として「豪商のまち」としてだけでなく、3つの国道が走る交通の要衝として活気ある街が特徴。
また市役所としても先進的で、平成29年より全国に先駆けて「おくやみコーナー」を設置するなど、住民の方への負担軽減と庁内業務改善のために全職員が取り組んでいる。